【あなたの活力源は?】
青木(右) 「YouTube」です。YouTube見るしか、一日何もやってません。演出やるときもYouTubeしか見ていません。どんだけYouTubeでクロムモリブデンは作られているかっていうくらい・・・。いやー、寝る前もずーっとYouTube見てますよ。あんな素晴らしい物はない! 世界中のダンス、パフォーマンスは見れるは、世界中の音楽は聴けるは、何でも見れるじゃないですか。もう家の中で何か悩んでいるときに見たら、それをそのまま使うっていうことはないですけど、ものすごく作品を作る上での活力源にはなりますね。
若い人って「YouTube」おもしろいんですかね? 年取ってくると、タイムスリップする感覚があるじゃないですか。「おお、こんなものが見れた」みたいな。始まった頃からずっと見てるんですけど、まだ飽きないなぁというくらい。田辺さんは何ですか?
田辺(左) ぼくは毎回聞かれているんで、毎回考えなきゃなんですけど、今回はぼくも「YouTube」です(笑)。自分が子供の頃に見ていたアニメとか、バンドとかって、たぶんYouTubeがなかったら、見返すことってなかったじゃないですか。80年代のJ-POPとかは見出すと止まんないですね。
青木 ピンクレディーとかも「すっげぇなぁ」とか思いながらずーっと見ちゃいます。下手なんですよ、踊りが。下手というか簡単だなぁみたいな。当時は一番すごいダンスのような気がしてたけど。
田辺 この前、ケイちゃんがテレビに出ていて、振付家の先生の話をしてたんですよ。「踊りながらだと歌えない」っていうと、「君たちだったらできるんだから、やるんだ!」っていう厳しいみたいな話だったんですけど。今聞くと、そうでもないのかな・・・?
何ですかね。海外のパフォーマンスって、完成度が高いものに感動したりするじゃないですか。日本はどちらかというと、ちょっとつたないものだったり、「もうちょっと」っていうものに対する応援だったり。なんかそういうものを好きだったりするのかな。
青木 AKBと少女時代の違いですよね。あの、そうなんですよ。アクロバットとかって、すごいの見てもそんなに感動しないんですよ。何なんでしょうね。ジャグリングとか、大道芸とかもすごいのに今、メインストリームじゃないじゃないですか。「何かすごいねー」で終わっちゃうじゃないですか。下手な人が頑張ってるのがいいのか。何なんでしょうね?
田辺 アイドルとかも歌がものすごい上手い人よりも、ちょっと危うい方がいいみたいな。ぼくも最初の頃は、大学の先輩たちが作っているものとか、外に観に行ったすごい完成度の高いものみたいなのを作りたいなと思ったんですけど、実際に自分たちで大学ではじめた劇団とかだと、そこまでできなくて。でも、それでもおもしろいって言ってくれる人とかもいて。もしかして日本人ってつたないものとかの方が好きなのかなと思ったりして。自分もそう考えてみると、つたない物への愛着みたいなものがあったりして・・・。
青木 ぼくも小劇場の方が商業演劇より好きなのは、ずっとそのへんで。商業が電動で舞台をセットごとグルーって回ったり、電動でムービングとか、昔は憧れてたんですけど、だんだん自分の中での感動がなくなってきて。小劇場の方が足らない分だけ、工夫するじゃないですか。あるいはすり抜ける技を持っていたりとか。笑いでごまかしたり。絶対そっちの方がおもしろいと思って。
田辺 パフォーマンスの精度は高いですけど、例えば少女時代とか東方神起とか韓流スターが日本で受けたりするのって、ぼくは日本語がつたないからだと思ってるんです。
一同 (笑)。
田辺 本当で。何でしたっけ?今、「スコット&リバース」っていう外国人が日本語で、日本語で歌を歌ったのがリリースをされたんですけど、それもすごくかわいくって。やっぱ日本語がつたないからいいんですよね。グラミー賞とか獲っているようなアーティストなんで、曲自体もものすごくいいんですけど。
青木 (笑)。何なんですかね。あれが日本語が流暢やとむかつくんですかね(笑)。
田辺 やっぱり、まずいい作品があったうえで、日本語がつたないと、ちょっと母性本脳みたいのをわしづかみにされるんじゃないでしょうか。
青木 母性本能とか大事ですかね。
田辺 日本人はつたなさが大事ですかね。
青木 日本人は母性を求めるから?
田辺 日本人がロリコン好きとかっていうのもあるとは思うんですけど。それもやっぱり、若い子のつたなさだとか、足りなさとか。
青木 未熟なもの。
田辺 完成された物よりはそこの手前が好きとかいうものも、そういう部分かなと思ったり。
青木 我々も完成度の低いものを目指して頑張っていきます(笑)。
田辺 いや、完成度の低いものは、たぶん違うんです(笑)。
青木 ちょっと足りないもの、(笑)
田辺 頑張ってるんだけど、ちょっとハラハラしちゃうような、応援したくなるのが、たぶん、AKBとかなんだと思うんですけどね。
ーーハラハラするのと応援したい気持ちは比例しそうですね。
青木 なるほど。ではハラハラ劇団を目指して。
(取材は今年3月に行いました)
【プロフィール】青木秀樹(右)
あおきひでき○63年生まれ。奈良県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、89年に劇団クロムモリブデンを旗揚げ。以来、同劇団の主宰・作家・演出家をつとめる。06年には、同劇団が本拠地を東京へ移転するにあわせ、都内へ転居。好きな食べ物はやきそば。
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次回予定◇クロムモリブデン『(未定)』12/19~22◎HEP HALL(大阪)、2014/1/9~23◎赤坂RED/THEATER
田辺茂範(左)
たなべしげのり○74年生まれ。長野県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン科在学中の95年にロリータ男爵旗揚げ。以来、同劇団の主宰・作家・演出家をつとめる。01年には、自宅アパートが火事になり転居。今年、出火と消火から12年を迎える。好きなやきそばは太麺。
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次回予定◇ロリータ男爵公演を来年2月にOFF・OFFシアターにて予定。主演女優オーディションを開催予定。詳細は9月9日、演劇キックホームページにて発表!
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