北川大輔 田辺茂範
【あなたの活力源は?】
【プロフィール】
北川 何だろう、活力源・・・。正直に言ったら、仕事取った瞬間が一番気持ちがいいですね。
——仕事って、何ですか?
北川 「花まる学習会」王子小劇場のネーミングライツが決まったときとか、自分の劇団公演の企画が通った時とか。一番上の責任者が「よし」と首を縦に振って話がまとまった瞬間、「よっしゃ!」と思ってぶるっと来ますね。劇団の若い子たちが、うちの劇場を借りに来てくれる契約のときもね。そのときはその瞬間だけじゃなく、彼らと話す時間も活力源になります。みんな「不安だ」って言うんですよ。「自分の芝居がおもしろいか不安で」とか、「お客さんどれくらいくるか不安で」とか。それらすべてを払拭はできないけど、せめて背中を押してあげたいとは思っていて。「君は何が強みなの?」とかヒヤリングをしていくうちに、「ここをおもしろいと思っているなら、そこをやったらいいんじゃないかな」と伝えてみたりとか。「やれる!」「おもしろい作品を作るぞ!」と思って帰ってもらいたいと思うんですよね。
——仕事の面が多いですね?
北川 すごーく、恥ずかしいこと言うと、自分の気合い入ったセリフが書けたときは、やっぱり「この瞬間を味わうために書いてた!」って思います。
——書けた瞬間に思うんですか?
北川 何回も何回も推敲して、プリントアウトして、読み返して、「むふふ」と思って。それを刷って、簡易的な製本をして、稽古場でみんなに渡す用に持って行くんです。その製本めいたものが出来上がって、読んで、「あー、行けるかもしれない」と思う瞬間がわりと活力源かもしれない。
——完成した台本は、稽古で変わることはないんですか?
北川 ここぞ! というシーンは変わらないですね。全部精魂込めて書いているんですけど、その中でも体重が乗って書いた「これだ!」というシーンは、一言一句間違わずに言って欲しいくらいです。かと言って、「一言一句間違わずに言ってくれ」とは言いませんね。俳優は俳優で勝手に読み取ってくれるので。「あ、これは北川ががんばってセリフだ」みたいな感じで思ってくれたりするので。そういう瞬間には、「よっしゃ!」って思います。
——田辺さんはいかがですか?
田辺 その話を受けると、んー、ぼくはターゲットを絞って「この人にうけたい」みたいに書いたりするんで。たとえば、台本を書いて稽古場に持って行って、最初に目を通してもらってるときのリアクションをさりげなく見てて。その人が笑ったりするのを、「あ、ここできたか」とかいうのが、まぁ、活力源というか。自分の中でどうとかじゃなくって、相手がだったり、この人がこう笑ったら、「ここはおもしろいと思ってもらえるんだな」っていうところですかね。
北川 すごーい! おれ、最初の本読みのときとかは、リアクションけっこう見れないんです。基本なんか、俳優たちって、斜に構えてた姿勢で読むじゃないですか。なんかなげやりな印象を受けるから、もうちょい、正座しろとまでは言わないけど、もうちょっといい姿勢で読んでくれてもいいかなと。けっこうまじめに書いたんだけどなと思ったりします。
田辺 ぼくは一気に全部を渡さないというか。役者さんを信頼してないというところもあると思うんですけど、「これをあなたはどうやりますか」なんていうふうに書くんじゃなくって、この人が一番やりやすい役を、書いてるんで。当て書きっていうことなんですけど。やって読んだ人が「おもしろい」って思うかどうか、その人の想像力の中にはまるかっていうのが大切なんで、ちょっとずつ10ページくらいずつ渡してるんです。俳優たちにとっては連載を読んでいるような感じで「次、どんななるんだろう?」って前のめりにさせないと、「おもしろい」とおもってもらえないんじゃないかという不安があるんで。
北川 ストイックなんですね。
田辺 いやいや。それはぼくが不安だということなんですけどね。
【プロフィール】
北川大輔(左)
きたがわだいすけ◯1985年生まれ、鹿児島県出身。脚本家、演出家、花まる学習会王子小劇場芸術監督。カムヰヤッセン所属。2008年3月、カムヰヤッセン旗揚げ。以降、同劇団の全作品で脚本と演出を手掛ける。軽妙なトークで場をまとめるのがうまい。現在、花まる学習会王子小劇場芸術監督として、芸術環境整備にも注力している。好きなことば「All it needs is courage,imagination, and a little dough」
〈花まる学習会王子小劇場〉
http://www.en-geki.com/
〈花まる学習会王子小劇場〉
http://www.en-geki.com/
田辺茂範(右)
たなべしげのり◯1974年生まれ、長野県出身。脚本家、演出家、ロリータ男爵主宰。多摩美術大学美術学部・グラフィックデザイン科卒業。1995年12月、ロリータ男爵旗揚げ。以降、同劇団の全作品で脚本と演出を手掛ける。軽妙なトークを流すのがうまい。好きなことば「Me too」